政治経済レポート:OKマガジン(Vol.307)2014.3.17


前々号で取り上げた小保方博士のSTAP細胞論文が大変なことになっています。残念ですねぇ。さて、世間の喧噪をよそに、平成26年度当初予算案の審議が佳境を迎えています。予算委員会野党筆頭理事として、最後までしっかりと職責を果たします。


1.氷山の一角

先週の予算委員会で、予算に関する疑惑が取り上げられました。対象は東日本大震災の被災地域の雇用創出事業に関わる「津波・原子力災害被災地域雇用創出企業立地補助金」。

財源は国民から追加追徴している復興増税。13、14年度予算で1730億円が基金として交付・計上されています。

この基金の管理業務を請け負っているのは一般社団法人「地域デザインオフィス」。昨年5月、経産省の入札によって決まりましたが、同法人は経産省と関係が深い組織です。

入札時には事務所実態なし(事務所を保有せず)。入札直前になって定款に「基金管理事業」を追記。法人登記上の住所には何と郵便受け(レンタルポスト)しかない幽霊組織。

入札への応札条件のひとつは「適切な事務所があること」。と言うことは、そもそも応札条件を満たしていない法人です。

担当大臣及び担当審議官は「落札までに新たに事務所を借りるということで認めた」との驚くべき答弁。基金管理業務を請け負うために慌てて定款変更し、落札後に事務所を借りたというのが実態です。

法人自体もそのために設立された疑いがあり、今でもまともなホームページがなく、情報公開は極めてお粗末。不正な入札と指摘されても仕方ありません。

交付要綱によれば、基金の運用利子は管理法人の事務経費に流用可。1730億円を年利0.01%で運用しても、年間1730万円の利子収入が得られます。

また、1730億円を流動性預金として銀行に預けることにより、当該銀行も相当の運用利益を得ます。そうした場合には、往々にして銀行から預金者(この場合には「地域デザインオフィス」)に様々な便宜が謀られます。

こうした不透明な予算の指摘はモグラ叩き。いくら国会で取り上げても「氷山の一角」。政府与党や霞ヶ関自身が自浄作用を働かせない限り、根絶は困難なのが実情です。

それでも一時は事業仕分け等に注目が集まり、徐々に是正される方向に進みつつあったように思えますが、状況は再び悪化している印象を受ける昨今です。

徒労感も感じるのが本音ですが、諦めることなく、氷山の全貌を捉え、氷山を溶かす努力を続けていきます。

2.幇間(ほうかん)

上記の件の経緯を聞きながら、「後付け(あとづけ)」という麻雀用語を思い出しました。学生時代と社会人当初はよく麻雀をしましたが、最近はスッカリご無沙汰。

麻雀をしない皆さんには馴染みがない言葉ですが、「後付け」というのは麻雀のルールのひとつ。要するに「後から条件を満たして上がる」手法。まさしく今回の入札を彷彿とさせます。

「後付け」を国語辞典で調べると「幇間(ほうかん)」という解説も掲載されています。「幇間」とは、宴会や酒席において座主や客の機嫌をとり、自らも芸を披露し、芸者・舞妓を助けて場を盛り上げる職業のことを指します。

「幇間」は別名「太鼓持ち(たいこもち)」、「男芸者」。ルーツは、豊臣秀吉の御伽衆を務めた曽呂利新左衛門だという伝承があります。

太閤秀吉の機嫌が悪い時に饒舌に太閤を持ち上げて場をとりなした新左衛門。この逸話から機嫌とりが上手な人を「太閤持ち」、さらに音が転じて「太鼓持ち」と言うようになったそうです。

単に太鼓を叩いて踊ることからそう呼ばれるようになったとする説もあります。また、正式呼称の「幇間」の「幇」は「助ける」、「間」は「人と人の間」を意味します。つまり、人間関係を助ける、人と人をつなぐ役回りが「幇間」「太鼓持ち」。

何だか話が逸れましたが、本件(「津波・原子力災害被災地域雇用創出企業立地補助金」)の場合、経産省が「幇間」なのか、受託した法人が「幇間」なのか。誰と誰の関係を良くしてつなごうとしたのか。真相は不明ですが、褒められたものではありません。

そう言えば、厚労省の案件も物議を醸(かも)しています。新聞でも報道されていますが、身内の天下り法人に職業訓練事業を受託させるため、入札条件を書き換えていたことが発覚。本質は経産省案件と同じです。

問題になっているのは独立行政法人「高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)」が落札した「短期集中特別訓練事業」。JEEDは厚労省所管の独立行政法人です。

厚労省は応札条件として「全省庁統一資格」という資格保有が必須であるという入札を一旦公示。ところが、JEEDから同資格を保有していない旨の連絡を受け、ホームページ上の公示内容を事後的に書き換え。「全省庁統一資格」を必須としないことに変更しました。

さらに、入札公示の前日に厚労省の担当企画官がJEEDを訪問していたことも判明。厚労省が入札内容等について事前に説明をしており、官製談合防止法(入札談合等関与行為防止法)違反です。

そもそも、厚労省は「短期集中特別訓練事業」の予算(今年度補正で149億円)を基金化し、これまた「いわくつき」の「中央職業能力開発協会(JAVADA)」に管理委託。そして、JAVADAから今回のJEEDに20億円の事業が再委託されています。

JAVADAには厚労省、経産省等の天下り官僚が多数在籍。理事長の月額報酬は約100万円。2009年の麻生政権末期に7000億円もの基金が造成されたことで一躍有名になりました。

その2009年以降、JAVADAには総計9950億円の予算が基金として投入され、昨年末時点で2266億円もの余剰金が発生。基金及び運用利子等から、人件費・事務費に毎年約13億円が使用されています。

かつて天下り組織等との癒着の温床の象徴と言われた「補助金」。その後、国会での補助金適正化の動きによって多少は是正されていると思っていましたが、今度は「基金」という仕組みに姿を変えて復活している印象です。

「太鼓持ち」と言われるようになった「幇間」。実はたいへん難しい職業です。「馬鹿を装った博学多才」でなければ座持ちできません。

そうした困難故、「噺家(落語家)」が舞台を「高座」と言うのに対し、「幇間」は宴席を「修羅場」と呼びます。

もっとも、こんな談合が横行し、血税が不透明に浪費、流用されるようでは、宴席の座主である国民、納税者にとってまさしく「修羅場」。日本の財政はいつか破綻します。

3.地下室の宴会

かつての癒着の温床「補助金」、今またその疑義が高まる「基金」。今国会での予算審議の焦点のひとつです。

そもそも「基金」という仕組みは、財政法には何の規定もありません。複数年度に亘って支出できる仕組みであり、財政法に抵触していると言えます。

財政法12条、同42条に掲げられている「会計年度独立の原則」に抵触するほか、憲法86条に定める「単年度主義の原則」にも反します。

さらに、複数年度に亘る支出の仕組みは、財政法に「継続費」(同14条の5)、「繰越明許費」(同14上の3、43条の3)、「事故繰越し」(同42条)の3類型が予定されており、「基金」はいずれにも該当しない法定外の手法です。

しかも、複数年度に亘る支出の仕組みの法定最長期間は「継続費」の5年。何年でも支出可能な「基金」は、超法規的な手法と言っても過言ではないでしょう。

2月7日の予算委員会において、僕の質疑の中で財務大臣に調査及び資料提出を要求。調査結果及び資料は理事会に提示され、真相解明、今後の善後策を検討するうえで、一歩前進です。

当該資料によれば、「基金」には「取り崩し型」「回転型」「保有型」「運用型」の4類型があるそうです。こういう整理及び認識が提示されたのも初めてのことです。

上述のように財政法には規定がなく、「法」としての予算が可決されることによって法的裏付けを付与されます。これも「後付け」。

予算案提出時には違法な仕組みが、予算案が可決されることによって適法性を付与されるという「後付け」の展開。そもそも、違法な予算案を提出すること自体が問題です。

「基金」という仕組みが始まった経緯は不詳であり、古くは昭和40年頃に造成された「基金」が今なお残っています。

既に可決された平成25年度補正予算、現在審議中の平成26年度当初予算案によって造成済み、または造成予定の「基金」は、全体で98基金、2兆6400億円に及びます。

「基金」という仕組みに必要性があることも完全には否定しません。とくに、東日本大震災の復興事業のようなケースでは有用な面もあります。

明後日(19日)も質疑に立ちますが、その際には「基金」に関する法制(仮称・基金法、基金情報公開法)整備や、毎年次の報告書の作成、提示を財務大臣に求めたいと思います。

かつて、塩川財務大臣が特別会計の浪費と非公開性を揶揄して、「母屋でお粥(かゆ)、離れでスキヤキ」と絶妙の喩えをしました。

それに倣えば、「基金」は差し詰め「地下室の宴会」というところでしょうか。そして、宴会の座持ちを良くしているのは「幇間」たる官僚。しかし、国民、納税者にとっては「修羅場」です。

「基金」問題。これからも注視し、追及していきます。

(了)


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