政治経済レポート:OKマガジン(Vol.289)2013.6.24


参議院選挙の準備で慌ただしい毎日が続いています。メルマガ月前半号を作成する時間的余裕もなく、こんな時期になってしまいました。あしからずご了承ください。今回の内容に関連して、是非 HYPERLINK "http://youtu.be/xCCFd-slqHk"をご覧ください。


1.「仮想現実」と「拡張現実」

2期目の活動記録であるダイジェスト・ムービー「Advance Flag(アドバンス・フラッグ)」をホームページとYouTubeにアップしました。予告編(45秒)に続いて本編(約8分)をストリーム。

URLは HYPERLINK "http://youtu.be/xCCFd-slqHk"。ご覧いただければ幸いです。

今回はAR(Augmented Reality、オーグメンテッド・リアリティ)技術を活用。スマートフォンやタブレットで僕の顔写真(ホームページ・ヘッダー部分、リーフレット・ポスター等の顔写真)を写すと、予告編が自動的にストリーム。

詳しくは、ホームページのサイドバー(スマートフォン、タブレットの場合はアンダーバー)「耕平チャンネル2013」の「ダイジェスト・ムービー(Advance Flag)」の説明をご覧ください。

ARの日本語訳は「拡張現実」。なかなか定義が難しい概念ですが、人が知覚する情報をコンピュータによって拡張する技術。

今回の例に即して言えば、「大塚耕平の顔写真」(人が知覚する情報)に反応して、「大塚耕平の動画」(拡張された情報)がストリームされるということですが、百聞は一見に如かず。まずは、お試しください。

VR(Virtual Reality、バーチャル・リアリティ)は「仮想現実」。これは、聞いたことがある人が多いと思います。言わば、人工的な情報をコンピュータによって創造する技術。

ARとVRは類似の技術と整理してもいいでしょう。ビジネスにも活用されています。

例えば、商品やプロジェクトに関する情報。商品写真や建設予定の街の模型写真に反応し、商品や建設プロジェクトの追加的な情報がユーザーに提供されています。

ここまで説明を読んでいただいても、きっと難解。何回聞いても難解。ダジャレを言っている場合ではありません。もう少し違う具体例で説明します。

2.「空想」と「実相」

比較的イメージし易い具体例は軍事分野。例えば、戦闘機パイロットのフルフェイス・マスクの内側には、自機の情報(燃料・速度等)や敵機との戦闘情報(ロック・オンの有無等)が表示されると聞いています。

見たことはありませんが、つまり、肉眼で得られる戦闘状況の知覚情報に、ARによって追加的な情報(拡張された情報)がパイロットに提供されるということです。

要するに、現実環境における作業を支援する情報技術。地上戦におけるヘッド・マウント・ディスプレイ(HMD、頭部搭載型ディスプレイ、片方の目は肉眼、もう片方には内側に情報が表示されるディスプレイ・グラス)も同じ。映画やゲームによく出てくる姿です。

もちろん、軍事分野だけではありません。製品メンテナンスを行うエンジニアの作業支援、医療における手術支援など、さまざま分野で実用化が図られているようです。

かつてのSFはどんどん現実になっています。ARと同様のアイデアは、1901年、作家のライマン・フランク・ボームによって記されています。ボームは、現実の映像に創作データを重ねて表示する「キャラクター・マーカー」という電子機器を提案しています。

1968年、ARを実現する機器としてアイバン・サザランドによってHMDが開発されました。

VRという用語は、1989年、ジェイロン・レイニアによって創作されたと言われています。一方、ARという用語は、1990年、ボーイング社のエンジニア、トム・コーデルが初めて使いました。

軍事分野や製造業(自動車・航空機等)分野で主に活用されてきたARですが、2000年代になると、携帯電話の普及に伴って一般消費者向けサービスに発展。

日本では、2007年、ARを応用したゲームソフト「THE EYE OF JUDGMENT」が発売。以降、ARが知られるようになりました。

「仮想現実」と「拡張現実」。わかり易い説明が難しいところですが、「仮想現実」は実現すべき世界を「空想」で生み出す技術、「拡張現実」は現実の事象についての「実相」を伝える技術、と整理できると思います。

3.政策分析への応用

「仮想現実」と「拡張現実」、「空想」と「実相」は、政策や政治を考えるうえで、意外に有用です。

例えば、日本の国際競争力向上のために「留学生」を倍増させるという政策。これは言わば目標であり、「空想」とも言えます。

もちろん、無理に実現しようと思えば可能です。留学先を問わず、国が資金面等でサポートすれば、数字上は実現できます。

しかし、狙いはそういうことではないでしょう。自発的な留学生、国際性や語学力を十分に身につけた若い世代を育むということのはずです。

その目標に至るための現実の教育政策の「実相」は「拡張現実」で確かめなくてはなりません。やる気に満ち、留学先の入学要件を満たす学生を増やすためには、そこに至る過程の基礎教育(幼稚園・小中学校・高校)こそが重要です。

日本の教育現場をHMDで見ると、モニターには「予算不足、教員不足、留学生倍増は現状では実現困難」という「拡張現実」による情報がストリームされることでしょう。

成長戦略の一環として発表された医薬品のインターネット販売解禁という目標。完全解禁された姿は今のところ「仮想現実」です。

この政策の「実相」を知るために薬局の現場をHMDで見ると、「成長との因果関係なし、政策としての合理性なし、高度医薬品のインターネット販売はリスクあり」という「拡張現実」による追加情報が得られることでしょう。

成長は新たな需要を獲得することが必要条件。医薬品の需要はインターネット販売を解禁しても変わりません。むしろ、医薬品の需要を減らす健康政策が求められている時代に、政策としての合理性も欠いています。

もちろん、ユーザー(国民)が医薬品を入手し易くなるよう、薬局や薬剤師の皆さんには自らそうした努力をすることが求められる時代。そういう文脈で医薬品のインターネット販売を政策目標として掲げるならば理解できます。

このように、政策目標の何が「仮想現実」「空想」であり、それが実現可能な状況にあるかどうか、またその目標の合理性を「拡張現実」「実相」によって知る必要があります。

次号では、中央銀行に過度に依存する経済政策の「仮想現実」と「拡張現実」を整理したいと思います。

(了)


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