問い直し、再設計・再構築することが急務。それが政治の役割であり、行政や企業労使、財界を含めた各界各層、ひいては国民全体にも覚悟が求められます。

3.労働力率

日本では高年齢者雇用安定法に「定年」という言葉が登場します。しかし、世界全体では、定年の有無も内容も国によって区々。

例えば米国。かつては65歳定年の慣行がありましたが、1967年に年齢差別基本法を制定。定年はなくなりました。英国も年齢差別禁止法によって2011年から定年が事実上消滅。

ドイツも定年規定はありません。しかし、年金受給開始年齢の65歳を期に企業を退職するのが慣行。「空白期」はありません。定年も年金受給開始も60歳のフランスにも「空白期」はありません。

一方、「空白期」の存在する日本、とりわけ制度的に「空白期」を容認している(受け入れざるをえない)のが日本の特徴と言えそうです。

もうひとつ日本の注目すべき特徴があります。それは高年齢者の労働力率。上記4か国の60歳から64歳の男性の労働力率(2007年)をみると、英国59.3%、米国59.2%、ドイツ45.3%、フランス17.5%。対する日本は74.7%。実によく働きます。

勤勉な国民性故の特徴とも言えますが、その他の日本固有の事情も影響していると考えるべきでしょう。

最大の原因は「空白期」の存在。制度上、定年と年金受給開始年齢が一致していても、早期退職者や60歳以降の受給開始を選択している人もいることから、「空白期」を埋めるために働かざるをえません。

「空白期」があるから高年齢者の労働力率が高いのか、労働力率が高いので「空白期」を容認しているのか。鶏と卵の関係のようです。

貯蓄金額の低さ、生活のコスト・物価水準も影響しています。十分な貯蓄があり、生活のコスト・物価水準が低ければ、定年後はノンビリするという人もいるでしょう。

貯蓄金額の低さには、現役時代に負担する持家等の住宅コスト、子どもの養育・教育コストの高さも影響しています。医療費や食費も同様。要するに、日本では広義の生活コストが諸外国に比べると相対的に高いのが現実です。

そうした点が改善されなくては、「空白期」の輪廻や「依存期」の長期化の問題は解決できません。なぜ広義の生活コストが諸外国に比べて高いのか。そこには政治や行政や産業の歪み、既得権益も輻輳(ふくそう)しています。

それらが解決されたとしても、「依存期」の長期化には限界があります。定年が定着し、年金制度が始まった頃は、定年も年金受給開始も寿命も50歳代。働かないで年金に依存し、多くの国民が長生きすることは想定していませんでした。

「働けるのに働かない」人が大勢いる構造では社会は成り立ちません。だからこそ「働くことを軸とする社会」でなければ社会は維