6月8日、菅内閣が発足しました。昨年の歴史的政権交代で誕生した新政権の再スタート。僕自身も内閣府副大臣に再任されましたので、引き続き全力で職務に精励します。
鳩山内閣を引き継いだ菅内閣。成長戦略についても検討作業を継承。まもなくその内容が発表される予定です。成長戦略に関する僕自身の考え方はメルマガ210号(2月22日付)等でも明らかにしていますが、今回は鳩山内閣の下で進んだ関連事案をご紹介します。
内閣発足前日の7日、行政刷新会議の規制制度改革分科会が開催され、報告書案が承認されました。
分科会設置は3月29日。僕自身が分科会長を務めています。2か月余りの間に、医療、環境、農業の3分野を中心に分科会委員、事務局と協力して精力的な検討を行い、膠着状態であった自民党政権時代と比べると改革が大きく進展。鳩山内閣の成果と言えます。
国民生活や経済活動の閉塞状態を生み出している規制や制度を改革することは、言わば財源を使わない景気対策。今回の取り組みを契機に、不断の見直しが始まります。
そもそも規制や制度は、政策目的に対する政策手段であり、その間には整合性と合理性が担保されなければなりません。
しかし、目的と手段の観点から不整合、不合理な規制や制度が徐々に増加。国民全体の利益に資さず、特定のステークホルダーの利益のために温存されている規制や制度も少なくありません。
この場合のステークホルダーには所管官庁自身も含まれます。いわゆる省益、局益といった類の問題です。
報告書案の冒頭では、僕自身が今後の改革の課題について書き下ろしました。各官庁が所管する規制、制度の全体像を毎年「規制制度白書」としてとりまとめ、情報公開することの必要性などを指摘しています。
課題の中でも重要なのは、改革を行う主体。言わばプラットフォームの問題です。
改革の主体は一義的には所管官庁。しかし、そうした考え方で臨んできた結果として、規制、制度が硬直化し、日本経済の閉塞状態を生み出してきた経緯があります。
そこで、所管官庁とは別途の横断的なチェック体制や組織を設けることが必要です。今回の検討を行った分科会のようなプラットフォームを整備し、時には公開討議(規制仕分け)を行うことも一案。
さらに、一定年限が経過した規制や制度は、必ず継続や見直しの要否を検討するプロセスを経る仕組み、言わばサンセットルールを確立することも重要。
着実な改革を行うために、個人的にはこうした内容を法制化することが必要だと思います。法制化は鳩山内閣を継承した菅内閣の仕事です。しっかり検討します。
成長戦略の柱のひとつは地域経済の活性化。そこに住む人も含め、地域社会全体が活気に満ちた状態になることが必要です。
鳩山内閣では原口大臣の下で地域活性化も担当。具体的には、内閣官房地域活性化統合事務局の担当副大臣ということです。
この事務局は主に4つの業務を所管。第1は中心市街地活性化制度。全国各地から提示された計画の認定と、財政支援等によってフォローを行います。
中心市街地活性化は普遍的な政策課題ですが、商店街のアーケードをつくるといった定番の発想から抜け出すことが必要です。住民の皆さんの創意工夫を活かすとともに、国の財政支援を受けることのみが目的化したような活性化策から卒業することが求められます。
第2は都市再生制度。どの都市も似たような再生計画ばかりでは、結局お互いに足を引っ張り合います。そして、この制度においても公共施設建設等に頼った都市整備計画という定番の発想から脱却することが必要です。
第3は地域再生制度。中心市街地、都市部以外の地域の再生計画を認定し、交付金によって支援も行います。都市再生と同様に、地域再生においても個性がポイント。橋や道路をつくって地域再生を行うという定番の発想では地域再生はできません。
第4は構造改革特区制度。本来は、全国的な規制改革に先駆けて特定地域で試験的改革を行うという制度。しかし、自民党政権時代にはそうした本来の目的が徐々に希薄化していました。
地域のお目こぼし的特例で満足するという定番の発想を改め、全国的な規制改革や地域活性化に資する先行事例をつくるという原点に立ち返るべきでしょう。
昨年9月に担当になった際には、これらの4つの業務が事務局の中でバラバラ、縦割り状態で運営されていました。担当者も相互にどのような業務を行っているのか情報共有ができておらず、各省庁、地方自治体等からの出向者で構成される事務局の士気も今ひとつ。
しかし、今年に入り、地方自治体等からの相談に一括して対応できるようなワンストップサービス拠点として事務局体制を一新。地方自治体の立場になって霞ヶ関全体との調整役を担うスーパーアシスト組織として再スタートを切りました。これも、鳩山内閣の間に実現した成果です。
もうすぐサッカーワールドカップの南ア大会が始まります。地域活性化統合事務局は、地域経済のフォワード役である地方自治体が見事なゴールを決められるように、絶妙のスルーパスを出す言わばミッドフィルダー役。
地域活性化が進むように、事務局の活躍を期待しています。菅内閣でも引き続き担当しますので、僕自身も頑張ります。
鳩山内閣では担当業務の観点から僕の上司は6人の大臣。そのひとり、枝野前大臣(現幹事長)の下で所管した組織のひとつが公正取引委員会。この組織も成長戦略と大いに関係があります。
そもそも、公正取引委員会は独占禁止法に基づいて設置されている組織。独禁法の目的は第1条に次のように記されています。
すなわち、私的独占、不当な取引制限及び不公正な取引方法を禁止すること等を通じて、「一切の事業活動の不当な拘束を排除することにより、公正且つ自由な競争を促進し、(中略)事業活動を盛んにし、雇用及び国民実所得の水準を高め、(中略)国民経済の民主的で健全な発達を促進すること」です。
条文を転記するといかにも堅いですが、要するに、経済活性化に役立ち、経済成長に資する活動をするのが公正取引委員会の仕事であり、独禁法の役割。
問題は本当にそのようになっているかどうかです。項番1では、規制・制度の適否はその目的との整合性、合理性が重要であることを指摘。項番2では、地域活性化の諸施策が実際にその効果が出ているかどうかが大事であると述べました。
同様の観点から、独禁法や公正取引委員会に関わる諸施策も、それが本来の目的に資しているかどうかがポイントです。例えば、独禁法の適用除外措置。15の法律、21の分野が適用除外として認められています。
適用除外にすることが独禁法の目的に資するのであれば合理的な対応です。あるいは、独禁法の目的には反しても、他の法律目的のためであれば「やむを得ない措置」という場合もあります。
21分野のうちのひとつが農協です。半世紀以上にわたって独禁法の適用除外になっています。農協には地域独占が認められ、かつ、物販と金融を併営。つまり、例外中の例外であり、独禁法の目的に資するとは言えません。
しかし、農協法の目的に資するのであればやむを得ません。農協法の目的は、第1条に次のように記されています。
曰く「農業生産力の増進及び農業者の経済的社会的地位の向上を図り、もつて国民経済の発展に寄与すること」。要するに、農業を強くし、農業を発展させ、農家の所得向上につながるかどうかです。
そういう観点から考えると、いろいろと疑問が湧いてきます。物販と金融にとどまらず、今や冠婚葬祭等の施設経営など、広範なサービスを提供する日本の「総合農協」制度。農家のあらゆる面倒をみる世界に例のない制度です。
農協は重要な組織だと思います。だからこそ、半世紀もの間、独禁法の適用除外とされている「総合農協」制度、現在の農協のあり方が、本当に日本の農業を強くし、農業を発展させ、農家の所得向上につながっているかどうかがポイントです。
この点についても虚心坦懐に議論をし、必要に応じて見直す体制が確立されました。これも鳩山内閣の成果です。
独禁法、公正取引委員会も引き続き担当しますので、守るべきは守り、見直すべきは見直します。半世紀前には合理的な例外であったとしても、現在においては合理的ではないかもしれません。
農協の中央団体関係者等を中心に異論もあるようですが、愛される農協、より有益な農協を目指して、一緒に改革に取り組んでいただきたいものです。もちろん、農協だけが課題ではありません。日本の農業を強くして、農業に従事したいと思う人が増えるような農業政策を実現することが改革の目的です。
(了)