政治経済レポート:OKマガジン(Vol.159)2008.1.6


参議院議員・大塚耕平(Ohtsuka Kouhei)がお送りする政治経済レポートです


今年の干支は戊子(つちのえね)。「戊」は「ほこ」という意味があり、「刈り取ってスッキリさせる」という含意。「子」は「終了」の「了」に「一」と書き、「古いことを終えて、新しいことを始める」ことを示唆。今年は日本にとって節目の年になりそうです。

1.見逃されたシグナル

良い節目ばかりではありません。世界経済は波乱の幕開けとなりました。日本の大発会の株価急落を受けて、先週末のニューヨーク株価も大幅下落。金融緩和に支えられてきた株価は本格的な調整局面=節目を迎えているようです。

昨年8月、株式市場は日本の株価が本格的な調整局面入りするシグナルを発していました。日本市場における外国人株式売買高が1兆円以上の売り超を記録。1987年10月のブラックマンデー以来、20年振りの事態です。

円のキャリートレードの巻き戻しが懸念され、案の定、急激な円高の進行。ところが、先行きを懸念していた市場関係者の気持ちとは裏腹に、福田首相や政府閣僚が「この程度の円高は問題ない」と発言。

円高の背景で進行している世界のマネーフローの変化に対して、あまりにも鈍感な発言に驚かされました。株式市場のシグナルは見逃されたと言えます。結局、5年振りに大納会の相場が年初を下回り、そして今年の大発会での急落。

海外当局は事態の深刻さを認識しています。とくにサブプライム問題の震源地、米国当局はとくに敏感。昨年9月から3回連続利下げを行い、今月末にも4回目の利下げが予想されています。昨年12月には主要中央銀行と協調して市場に大量の資金を供給。年初早々、今月も資金供給することを宣言。総額では1000億ドル(約10兆5億円)に及びます。

2.「鍵」はマネーと資源、「鍵」を握るのは中国とロシア

今回の株価急落は原油が1バレル100ドルを超えたことが契機。しかし、気になるのは原油だけではありません。他の資源も軒並み最高値を記録し始めました。

今年の世界経済に影響を与える「鍵」はマネーと資源。過剰流動性というマネーが金融・証券・為替・商品・不動産などの市況を乱高下させ、資源価格の高騰はインフレやスタグフレーションを招く懸念があります。

その「鍵」を握るのは中国とロシア。両国の猛烈な成長とバブル経済、資源を巡る動きが世界経済の波乱要因です。

ここ数年の中国は資源外交に腐心。胡錦濤主席は既に3回もアフリカを訪問。一昨年11月には約50カ国のアフリカ諸国首脳を北京に招聘、資源確保に手を打っています。プーチン大統領の院政が確定したロシアも露骨な資源囲い込みを始めています。

日本も遅ればせながら資源外交に注力。日本にとってエネルギー資源や家電・自動車などの製品に不可欠のレアメタルの安定調達は重要課題。レアメタル価格はここ数年、原油以上に高騰しています。

昨年は南アフリカ(レアメタル)、アンゴラ(石油)、マダガスカル(ニッケル)、ザンビア(銅)などと資源の共同開発に合意。単なる資源確保ではなく、探査・採掘・加工までを行って相手国の経済発展を支援。中国やロシアの資源買占めが新植民地主義と批判されているのと一線を画す戦略です。

政策担当者、企業経営者は、日米中の金融緩和政策=マネーの動向を注視するとともに、中国、ロシアの資源外交などの情報もフォローすることが必要です。情報の入手・分析の遅れと間違いは、国家にも企業にも大きな痛手となります。

資源の枯渇と高騰が顕著になってきた中、資源小国・日本にとっては節目の局面。経済政策運営と経済外交・資源外交に強い政権の登場が必要です。

3.現実味を帯びてきたスタグフレーション再来

従来の経済政策、政治の対応(予算編成)の基本的考え方は次のふたつです。

ひとつは、不況になるとデフレ、だからマネーを増やし、景気をよくするために、金融緩和(金利引下げ)を行い、財政支出を増やす(積極予算の編成)。

もうひとつは、好況になるとインフレ、だからマネーを減らし、景気過熱を冷やすために、金融引締(金利引上げ)を行い、財政支出を減らす(緊縮予算の編成)。

しかし、どうやら、現在は「不況なのにインフレ」という基本とは異なる組み合わせに向っています。不況とインフレが同時に起きる状態のことをスタグフレーションと言います。

1970年代のオイルショックの際に同様の状態が生じたことから、現在50歳以上の皆さんは記憶にあることと思います。

1970年代も現在も、金融緩和に伴う過剰流動性(マネー)と原油価格の高騰という同じ事態に直面しています。しかし、1970年代と現在では大きな違いがあります。節目の先の風景を左右する重要な違いです。

1970年代以降、過剰なマネーは主に米国と日本を中心に活用され、とくに日本は、人口増加を伴う経済成長と相俟って、資産インフレによって国富を高め、スタグフレーションの窮地を打開。

原油価格も、第4次中東戦争後の米国による中東覇権と資源覇権の確立を経て安定したほか、そもそも日本経済は、原油価格上昇を吸収できるだけの成長とコストダウンの余地がありました。

さらに、現在の中国、ロシアの存在。インドも気になります。今回、過剰なマネーの恩恵を被るのは成長著しいこうした国々。また、米国に集中していた資源覇権も、中国、ロシアなどに分散、移譲していくでしょう。よほど巧みな経済外交・資源外交を行わない限り、日本が資源覇権にくい込み、経済の安定を自律的に確保することは困難となりつつあります。

再度述べなくてはなりません。資源の枯渇と高騰が顕著になってきた中、資源小国・日本にとっては節目の局面。経済政策運営と経済外交・資源外交に強い政権の登場が必要です。

(了)


戻る