3つの過剰」問題の緩和、業績好転の背後では、雇用面での従業員側の協力、コスト削減面での取引先・下請け企業の協力があったことを忘れてはならないでしょう。さらに、債務減免=債権放棄というかたちで過剰債務を整理した企業は、要するに借金を棒引きしてもらったという事実を記憶に止めなくてはなりません。

もうひとつの理由は「不均衡のバランス」です。「不均衡のバランス」とは不思議な表現かもしれませんが、今の日本を取り巻く世界経済の構造を表しています。

このメルマガでも中国のことは何回も取り上げています。今回は中国が主役ではありませんが、中国が生産し、米国が消費し、産油国が資金を供給するという世界経済の構造は、日本に大きな恩恵をもたらしました。

中国に生産拠点をもつ日本も潤い、産油国の資金は日本にも向かいました。しかし、これを支えているのが、米国の巨額の「双子の赤字」(貿易赤字と財政赤字)、つまり「不均衡」であることは言うまでもありません。中国も、国家は潤うが国民の大半は貧困層という「不均衡」に直面しています。地下資源頼りの産油国は、付加価値を生み出さない経済大国という「不均衡」の上に成り立っています。こうした「不均衡のバランス」の中で、日本の現在があります。

「不均衡のバランス」が崩れたり、各国の不均衡が国内問題化する場合、日本経済の先行きも楽観できません。

3つ目は日本自身のマクロ経済政策です。超のつく「異常な金融緩和政策」が10年も続いていることはご承知のとおりです。そのことによって「3つの過剰」のうち債務問題を緩和し、また、株価や国債価格を下支えしてきました。

ちょっと難しい話ですが、過去10年続いている超低金利は、資産超過部門から負債超過部門に金利収入を移転させています。したがって、企業の過剰債務解消は、家計や無借金企業など、資産超過部門の我慢、忍耐に支えられてきたことも再認識する必要があります。

「3つの過剰」問題の緩和、「不均衡のバランス」と「異常な金融緩和政策」の恩恵、この3つが、現在の日本の株価を支えている基本的な要因と言えます。

3.新ジャパンプロブレム

さて、この3つの理由、ずっと続けば良いですが、残念ながら経済は生き物。常に変化します。

現在起きている現象の背後では必ず新しい変化が生み出され、異常な出来事の背後では必ず異常な現象が進行しています。

雇用過剰を解消した背後では、ニート、フリーター、非典型雇用が社会問題になっています。中国国内の不均衡は各地の暴動につながり、米国経済の不均衡は「双子の赤字」問題をより深刻化しています。

しかし、個人的に最も心配しているのは「異常な金融緩和政策」の今後の展開。景気対策、経済政策を、過度の金融緩和に依存する姿は、前回のバブル前夜と基本的には同じ構造です。

また、戦後の日本の金融政策を振り返ってみると、金融引締は米国が金融引締の時期にしか行っていません。つまり、米国が金融緩和に転じた場合、経験的に言えば