政治経済レポート:OKマガジン(Vol.29)2002.7.27

元日銀マンの大塚耕平(Otsuka Kouhei)がお送りする政治経済レポートです。


第154回通常国会もあと3日を残すだけとなりました。今年1月から、実に長い半年でした。国会が始まった時に、辻本清美議員、加藤紘一議員、参議院議長(井上裕氏)が辞職し、鈴木宗男議員が逮捕されることなど想像もできませんでした。半年後には、何が起きているのでしょうか。予想外に良いことが起きていることを期待したいですね。

1.医療制度改革法案の成立:平成15年度当初予算に注目

昨日、医療制度改革関連法案が参議院本会議で可決され、成立しました。来年4月から、サラリーマン本人とその家族の医療費の自己負担が3割に上がることになりました。70歳以上の高齢者については、今年10月から1割の自己負担を徹底するとともに、夫婦2人の年収が630万円以上の場合は2割負担を求めることとなります。

医療財政が苦しいのはよく分かります。何とかしなくてはなりません。しかし、他の分野でまだまだ無駄がある中で、優先順位付けが間違っているのは明らかです。これまでのメルマガでもお伝えしましたが、例えばODA、年間1兆円です。たしかに国際貢献は必要です。しかし、その1兆円のうちある部分は国内に還流し、その過程で鈴木宗男的政治家や悪徳官僚がピンハネしているのだから困ったものです。援助対象国に渡った資金は、正しく使われているのでしょうか。援助国の政府高官が懐に入れたり、軍事費に流用されているという話は枚挙に暇がありません。

まだまだ不必要なハコモノ公共事業があることも何度も指摘しています。例えば、沖縄。大学院大学や泡瀬の干潟の話は前号でお伝えしましたね。大学院大学について、7月11日の財政金融委員会で内閣府と塩川財務大臣に「いくらかかるのか」と問い質したところ、「まだ決まっていない。平成15年度予算にいくら盛り込むか検討中だ」と答えました。

しかし、僕は6月29日に沖縄担当の尾身大臣が那覇市で講演した際の資料を入手していました。その資料には、建設費800億円、年間運営費200億円と明記してあります。どういうことでしょうか。なぜ国会で言えないのでしょうか。こうして公共事業の予算規模がひとり歩きしていきます。大学院大学が悪いのではありません。政府・与党の不透明な対応に問題があるのです。

泡瀬の干潟の埋め立て事業費は500億円と言われています。事業の落札業者には、中谷防衛庁長官の実父が経営する建設会社が入っています。「だからどうした」と思われる方もいると思いますが、沖縄の公共事業は米軍駐留の見返り的な側面が否定できません。駐留米軍と交渉する立場にある防衛庁長官である以上、在任中は実家の会社が関係事業を受注することを自粛するぐらいの節度があってもいいと思います。しかし、それにしても米軍駐留の見返りに、必要のない埋め立て事業をやって自然環境を破壊するのは如何なものでしょうか。いっそのこと、関係業者に現金で配ったらどうですか、小泉さん。その方が自然環境を破壊せず、よほどマシな対応です。

いずれにしても、鈴木宗男氏が逮捕された今、沖縄利権は与党政治家の草刈り場になっています。秋の臨時国会中に組成され、来年の通常国会で審議される平成15年度当初予算の動向から目が離せません。しっかり調べさせてもらいます。

2.厚生労働省に反省を求める:しっかり仕事すべし

厚生労働省に反省を求めたいと思います。

医療制度改革関連法案の審議を行うために、僕も7月22日の行政監視委員会と23日の厚生労働委員会で質疑を行いました。

この半年間、医療保険制度の根幹をなす診療報酬制度の実態を追いかけてきました。診療報酬制度は、診療報酬や薬や医療材料に保険点数を付け(1点=10円)、点数分の金額を病院に還付する制度です。

医療財政が厳しい折柄、平成14年度からの適用点数を決める際に、制度始まって以来、初めてのマイナス改定が行われました。前年度までの診療報酬制度にかかるコストがマイナス2.7%となるように、個々の診療報酬、薬価、医療材料費を見直したのです。

マイナス改定はやむを得ない面もあります。問題は、厚生労働省が約15000種類にのぼる手術、措置、薬、医療材料にかかるコストをしっかりと積み上げ計算をしているかどうかということです。いくつかの事実から、厚生労働省はこの計算をしっかりと行っていないことが明らかになりました。

今回の医療制度改革関連法案は、現在の診療報酬制度の財政状況が前提となっています。前提である診療報酬制度の財政状況について「瑕疵(かし)がある」=「ウソがある」以上、当然、医療制度改革関連法案の審議はできません。

23日の厚生労働委員会では、「事実が明らかにならない限り、審議できない」と阿部委員長に申し上げました。答弁に立った大塚保険局長は、「事実を明らかにする」と答えましたので、とりあえず審議ストップにはなりませんでしたが、今後、どのような事実が明らかになるのか十分に見極めたいと思います。それにしても保険局長、苗字が同じなんですから、シッカリやってくださいよ。期待しています。

因みに、阿部委員長も厚生労働省出身です。強行採決が行われた時に大仁田氏に守られていた委員長が阿部さんです。委員会で強行採決が行われた25日、阿部委員長が声をかけてくれました。「君の指摘のとおり。長年の問題だ」ということでした。委員長のお墨付きも出たことでもあり、信頼される診療報酬制度の構築に向けて、今後もこの問題に取り組んでいくつもりです。

3.「カモ」の次は「ウナギ」

藤原紀香さんが国債の宣伝に登場したことは、以前お伝えしたとおりです。ポスターやテレビで、「国債っていいかも」と言ってますよね。

でも、これ、「国債っていいかも」の「かも」は「ネギカモ」の「カモ」だとブラックジョークが一部で囁かれています。

7月11日の財政金融委員会で、「塩川さん、このカモは、国債を発行する国の方ですか、それとも国に買わされる国民の方ですか」と聞いたところ、大笑いしながら、「いや、大塚さん、それは「国債っていい、カモン」ということじゃあないですか、ハハハ」などと意味不明のダジャレを飛ばしていました。まったく喰えない爺さんだ(大臣、こりゃあ、失礼しました)。

昭和18年、戦費調達のために個人向け国債の販売を開始した当時の大蔵省は、連日、新聞広告を出しました。委員会にその広告を持っていき、大臣にお見せしました。皆さん、どんな広告か想像がつきますか。松坂屋のマーク入りの広告です。「上野松坂屋、国債売場1階、人気沸騰」という内容です。委員会当日、イタリアの新聞が藤原紀香さんのことを取り上げていました。曰わく、「日本はとうとう有名女優を駆り出さないと国債を消化できなくなり始めた」。かつて、財政的にはG7の劣等生だったイタリアに揶揄される事態です。塩川さん、笑ってる場合じゃあないですよ。

今日、27日の朝刊には、「小泉首相、1兆円の先行減税。つなぎ国債も財源」というニュースが報道されていました。「つなぎ国債」とは、「将来見込まれる特定の歳入を償還財源とするので赤字国債とは違う」のだそうです。しかし、特定の歳入を償還に使ってしまえば、ほかに回す財源が足りなくなるだけです。お金に色はありません。赤字国債と何ら変わりはありません。

先行減税には賛成です。前から僕も主張しています。しかし、その財源は無駄な歳出を削減して捻出してください。イッパイあるはずです、ODAとか大学院大学とか。

もうそんな方便や厚生労働省のようなウソばかりついてないで、小泉さん、もう少し塩川さんみたいにダジャレでも飛ばしたらどうですか。なかなか捕らえどころのない国債だけど、発行すると精がつくので、「つなぎ国債」改め「ウナギ国債」なんてどうですか。「カモの次はウナギかあ」なんて、国民も少しは明るくなるかもしれませんよ。

「カモ」「ウナギ」とくると、その次あたりは「スッポン国債」ですか。日本経済、相当元気になりそうです。

(了)


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